景気低迷で消費者が節約志向を強め、逆風の吹き付ける外食業界にあって、圧倒的な“勝ち組”の座をつかんだのが、中華料理店「餃子の王将」を展開する王将フードサービスだ。テレビや雑誌などで頻繁に取り上げられて知名度がアップし、客数が大幅に増え、結果として業績が伸びるという見事な好循環が働いている。「私たちがびっくりするくらいの絶好調ぶり」と同社経営陣が自ら語るほどの快進撃は、いつまで続くのか。
外食チェーンとしての力を測る指標のひとつが既存店売上高。王将の場合、既存店売上高は今年11月まで実に28カ月連続で前年同月の実績を上回っている。
特にリーマンショックを境に日本経済が深刻な不況に陥った昨年秋以降の伸びがめざましく、2月以降は2ケタ増が続いており、6月には25・9%増という驚異的な数字をたたき出した。
「(好業績企業の)ユニクロ、ニトリ、王将…。これらの共通項を強いて挙げれば、それは『バリュー(価値)』だ。値段が安いのもさることながら、値段を上回る価値がはっきりとしていて、わかりやすい」
11月26日、大阪市中央区の大阪証券取引所のビル内で開かれた王将フードサービスの中間決算説明会。証券アナリストらが席を埋める中、鈴木和久専務は言葉にこう力を込めた。
第一線の店舗に思い切って権限を移譲することで、多くの外食チェーンに見られるような全店の画一化ではなく、店舗ごとの「多様性」を追求するというのが王将の戦略の柱だ。
調理済み食品ではなく、店舗内調理を武器に“できたて感”を訴求。店舗側が立地や客層にマッチした独自メニューを開発し、値段も決める。その代わり、店舗の業績は本部が厳密に評価する。昨年秋にブレークする前からじっくりとまいてきた種が、不況を引き金に客単価840円前後という低価格も相まって、一気に花を咲かせた。
最近は、王将のこうしたスタイルをまねた同業他社も出てきているという。だが、鈴木専務は「40年以上やってきた歴史の中で、いろいろ深い部分がある。形だけまねても、なかなか定着しない」とくぎを刺す。
収益改善のために不採算店舗の閉鎖など“後退戦”を余儀なくされる外食チェーンも少なくない中、王将は好業績を背景に拡大戦略にも打って出る。空白地帯だった東北地方の第1号店として今月25日、仙台市青葉区に「仙台一番町店」をオープン。中期的には、仙台市を中心に東北地方で数十店舗は構えたいという。
王将は、創業者の故・加藤朝雄氏が昭和42年に京都市の中心部・四条大宮で開いた1軒の中華料理店がルーツだ。加藤氏の妻は大東隆行・現社長の姉にあたる。関西を中心に約540もの店舗網を擁するまでになった今も、京都市山科区のあまり便利とはいえない場所に本社を構えている。
今の王将の“昇り竜”のような勢いは、同じ京都に本社を置くゲーム大手、任天堂のかつての姿を彷彿(ほうふつ)とさせる。もちろん両社は業種も企業規模もまったく異なるので、同じ土俵で論じるのは適当でないかもしれない。だが、任天堂も大幅な増収増益決算を発表するのが当然視されていた時期があった。
「今、王将のブームが来ているが、これは一時では終わらない。まだまだ伸びる自信がある」。残暑の厳しい9月24日、創業1号店である四条大宮店(京都市中京区)の新装開店を翌日に控えた内覧会で、あいさつに立った大東社長はこう強調した。
顧客を飽きさせないためには、常に新しさや他社との違いが要求される。クリアすべき既存店売上高のハードルも今後は確実に高くなっていくが、「前年実績を絶対に割らないことが軸になる」(鈴木専務)として、さらなる成長を掲げる。大東社長の「まだまだ伸びる」との自信を、どう現実のものにしていくかが問われる。
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